コタ、迷子になる

2021-03-31

先日、家族でショッピングモールに行った。

そこで、コタが迷子になってしまった。

 

 

 

私がトイレに行き、コタとよちよち歩きの下の子を夫に見てもらっている時だった。

夫がちょろちょろ動き回る下の子に気を取られ、コタから一瞬目を離した隙に、コタはいなくなっていた。

 

 

 

でも、コタがいなくなったと聞かされた時、私はそんなに焦らなかった。

すぐに見つかるだろうと思った。

なぜなら、コタは母子分離不安があるので、パーっと走って行ってしまうことはあっても、必ず後ろを振り返って私がいるかを確認する。

もし私の姿が見えなくなったら、「おかあちゃーん」と呼ぶ。

 

だから、きっとそばにいるだろう。

きっとすぐそばの物陰から、私を呼ぶだろう。

 

 

 

夫と下の子はコタとはぐれたトイレの前で待っててもらい、私はコタを探しに行った。

 

トイレ横のエレベーターには乗っていないと夫が言うので、きっとこの売り場のどこかにいるはず。

私は耳を澄ませつつ、近くの電化製品売り場とゲームコーナーを一列づつ小走りで見た。

 

 

 

しかし、フロアを2周回ってもいない。

呼び声も泣き声も聞こえない。

 

 

 

ここにはいないのだろうか?

 

 

 

だとしたら…。

 

 

 

ここには何度か来たことがあり、コタの好きな場所は分かる。

 

このショッピングモールは「A館」「B館」「C館」と建物が3つあり、それぞれ渡り廊下でつながっている。

今、私たちはB館にいる。

コタはA館とB館をつなぐ渡り廊下の窓が好きだ。

いつも、一窓づつ立ち止まって、下の道路を眺めている。

 

 

 

その渡り廊下に行ってしまったのだろうか。

 

 

 

渡り廊下の先には一番大きなA館。

 

コタの大好きなエスカレーターもある。

 

 

 

大丈夫だろうか?

まさか1人で乗ってないよね…?

 

 

 

エスカレーターの先には、いつも何度も乗るコタのお気に入りのエレベーター。

 

 

 

いや、さすがにそんなに遠くまでは行かないだろう。

 

 

 

…でも、

 

可能性は無くは無い。

 

 

 

だって、泣き声が聞こえない。

 

 

 

コタは私たちがいないことに気付いているはず。

きっと大きな声で泣いているはず。

泣き声が聞こえないということは、相当遠くへ行っているのだろう。

A館のエレベーターを見に行った可能性は十分にある。

 

 

 

そのエレベーターの先は出口。

立体駐車場。

 

 

 

私はだんだん焦り始めた。

 

 

 

外に出ていないだろうか。

パニックになっていないだろうか。

 

 

 

私は急いでA館の渡り廊下に向かった。

渡り廊下にはインフォメーションがある。

もしコタがここを通ったのなら、インフォメーションの方が見ているかもしれない。

 

 

 

インフォメーションに着いた私は、息も切れ切れに、案内の女性に聞いた。

 

 

 

私「すいません、ここを、3歳くらいの男の子が通りませんでしたか?黄色い、リュックの、男の子、」

 

女性「特徴を教えて頂けますか?」

 

私「えっと、3歳の男の子で、黄色いリュックで、青いジャンパーを着ています、下は、えっと、」

 

女性「今放送かけたんですよ」

 

その女性はにこっと笑ってそう言い、インフォメーションのカウンターの奥の扉を開けた。

 

 

 

そこには、目を真っ赤にしたコタが、1人でちょこんと椅子に座っていた。

 

 

 

私が「コタ!」と声をかけると、コタは私と目が合ったとたん、ふぁーと泣き出した。

 

コタは泣きながらインフォメーションから飛び出してきた。

私がぎゅーっと抱きしめると、コタは更に激しく泣いた。

 

私はコタを抱きしめながら、インフォメーションの方に何度もお礼を言った。

 

 

 

コタが渡り廊下で泣いていたのを警備員の人が見つけ、インフォメーションに連れて来てくれたそうだ。

 

 

警備員さん、ありがとう。

きっとコタはパニックになっていたはず。

そのコタをインフォメーションに連れてきてくれてありがとう。

インフォメーションの方も、コタを落ち着かせてくれてありがとう。

コタを安全なところにいさせてくれてありがとう。

 

館内放送は全く聞こえなかった。

コタの泣き声ばかりに集中していたからだろうか。

 

 

 

 

コタは抱っこをせがみ、それからしばらく泣き止まず、抱っこもしばらく止めなかった。

 

 

 

 

 

 

しかし、迷子って怖い。

本当に、一瞬の隙にいなくなり、想像より遠くへ行ってしまう。

 

 

 

今までこんなことは無かった。

 

離れることはあっても、迷子になることなんて無かった。

 

だから、油断していたのかもしれない。

 

 

 

今回は、運良くケガもなく無事だった。

 

でも、もしエスカレーターに乗って転んでしまったら?

パニックになったコタが誰かをケガさせてしまったら? 

屋内ではなくて、屋外だったら?

踏切のそばの電車の公園でだったら?

 

 

 

ゾッとする。

 

 

 

こういうことは起こり得るのだ。

 

 

 

コタには衝動性がある。

油断してはいけない。

その当たり前のことをしみじみと感じた出来事であった。