シリーズ~昔の日記を読む~ 第1話:お昼寝の並び順

2021-01-23

日記には様々な出来事が残してあって面白い。

 

パラパラとめくると、忘れていた小さな喜びや幸せ、悲しみがよみがえる。

 

不思議なもので、悲しみさえ、なんだが懐かしく優しく感じてしまう。

 

 

 

 

せっかくつけた記録なので、

 

この日記を、『シリーズ~昔の日記を読む~』と題し、

 

再編集して公開しようと思う。

 

 

 

 

本日は早速、第1話をお届けする。

 

 

 

 

ちなみに、私の頭の中ではNHKの『小さな旅』のBGMが流れている。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

昨年(2020年)の8月31日。

 

コタがちょうど3歳になったばかりの時の記録である。

 

 

 

 

お昼寝の時、

コタが布団に寝る並び順に納得がいかず癇癪を起した。

 

 

布団には端から、

「私」

「下の子(当時6ヵ月)」

「コタ」

「もんきち(ぬいぐるみ)」

という4人の順だった。

 

しかし、コタは私と下の子の間に入りたいらしい。

でも私は下の子を添い乳で寝かすから、コタが間に入ることは出来ない。

 

 

いつもはこの順で大丈夫なのだが、どういう風の吹き回しか。

 

やれやれ―。

 

何にしても、風を恨んでいる暇はない。

 

コタの癇癪は始まってしまったのだ。

 

対処せねばならぬ。

 

 

 

私は、ならばと

「もんきち」

「コタ」

「私」

「下の子」

の順にしてはどうかと提案した。

 

 

しかしそうすると、私が添い乳する下の子に体を向けるため、コタに背中を向けることになる。

それも納得がいかないらしい。

「おかあちゃん!こっちむいて!」と更に興奮してしまった。

 

 

 

さあ、困った。

 

母は、みんなで気持ちよくお昼寝をしたいのです。

 

どうやって、コタに納得してもらいましょう。

 

 

 

私は、3つの作戦を織り交ぜてみた。

 

 

 

★作戦その1…もんきちを使う

 

コタの気を紛らわす作戦。

 

もんきちには悪いが、彼には布団から出てもらうことにした。

 

 

私「もんきち君、ちょっとお布団が狭いから、もんきち君は妹ちゃんのベビーベッドで寝てくれない?」

 

もんきち(私)「えー?ぼく?」

 

私「ごめんね、ベッドで寝てくれると助かるんだ」

 

もんきち(私)「うーん、わかったよ。じゃあ、みんなでゆっくり寝てね」

 

私「もんきち君、我慢してくれてありがとう」

 

もんきち(私)「うん、ぼくがんばるよ」

 

 

コタの方は一切見ずに会話をするのがコツである。

 

目論見通り、コタは泣くのを止め、私ともんきちのやりとりを黙って見た。

 

 

私はもんきちをベビーベットに座らせ、こちらを向かせた。

 

私は布団から「もんきち君、ありがとうね」と言い続けた。

もんきちは時々「ぼくもそっちがいいなあ」と言った。

 

 

しばらくして、

もんきちが何度目かの「ぼくもそっちがいいなあ」を言ったとき、

 

コタはベビーベットに行き、もんきちに向かって、

「もんちゃんは べっどで ねるの」

「ここにいてね」

とたしなめた。

(これは、めちゃくちゃ可愛かった) 

 

 

 

…よし。

ひとまずコタは落ち着いた。

 

 

 

私はコタに「コタありがとう。もんちゃんもありがとうね。さて、寝るか」と言った。

 

 

コタは布団に入ってきた。

「私」

「下の子」

「コタ」

のいつもの順である。

 

 

でもやはり、納得いかないのか寂しくなるのか、

しくしく泣きながら「おかあちゃん、コタのここ、きて」と言った。

 

 

 

★作戦その2…手々つなごう

 

私は手を伸ばし、「コタ、お手々握って」と言った。

コタは私の手を握った。

 

私は、

「ありがとう。これで安心だな。お母ちゃん、コタとお手々つなげて嬉しいなー」

と、笑顔で言い続けた。

そして私は、コタの手を強く握ったり優しく握ったり、くすぐったりした。

 

コタは私の手を握ったことで安心したのか、笑顔が戻ってきた。

 

 

 

★作戦その3…女優魂

 

コタは笑顔になりつつも、まだ諦められない様子。

「おかあちゃん、こっちは?」と自分の隣を誘い続ける。

 

 

母は女優になった。

 

 

「お母ちゃんもそっちに行きたいのよ~。

妹ちゃんがねんねしたらすぐ行くね~。

本当はお母ちゃんもコタのところに行きたいんだから~」

 

 

私はひたすらそう言った。

 

 

本気の、悲しい顔で。

 

 

―母もそっちに行きたいのよ。

 

―でも、やむにやまれぬ事情があって、どうしても行けないのよ。

 

―でも頑張るから。

 

―母、頑張るから。

 

―待っていて、コタ。

 

―必ず、あなたの元へ、行くから…!

 

 

 

私の迫真の演技に、

 

(そうか、母も来たいけど、来れないのか)

 

と納得したかどうかは分からないが、

 

 

 

コタは喋るのを止め、

 

私の手をにぎにぎしながら、

 

とろとろと、眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

2020年、8月31日の蒸し暑い午後。

 

1時間以上の時をかけ、

ようやく無事に、平和なお昼寝タイムは訪れたのでした。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

シリーズ~昔の日記を読む~ 第1話:お昼寝の並び順・終