コタが3歳1ヵ月、下の子が6ヵ月の時の記録である。
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我が家にはベビーベッドがあり、下の子は主にそこで過ごしている。
ベッドの床面の高さは45センチ、柵の高さは70センチ。
コタはベビーベッドに寝ている小さな赤ちゃんに興味津々で、
眺めたり、話しかけたり、時々手を伸ばして柵の上から下の子を触ろうとしていた。
ある日のこと。
下の子はベビーベットでうつぶせになっていた。
コタがいつものように柵の外から下の子に話しかけていた。
コタの手には下の子のおもちゃ。
横25センチ、奥行き20センチ、厚みが5センチくらいで、
ボタンにレバーにベル、回すと音の鳴るカラカラ、数個のボールが通された棒がついており、指先を使って遊ぶ知育玩具。
重さは600gくらいだろうか。
コタは「あのねー、妹ちゃんね、これね、こうやってやるの」と、
下の子におもちゃの使い方を教えてあげていた。
可愛いなあ、と微笑ましく見ていたら、
コタがそのおもちゃを頭の上に持ち上げた。
あっ、と思った瞬間、
コタは柵の上からベビーベッドの中におもちゃを投げ落とした。
一瞬の出来事だった。
おもちゃは見上げている下の子の顔の上に落ち、
下の子は火のついたように泣き出した。
私は「妹ちゃん!」と叫びながら慌てて下の子を抱き上げ、
「大丈夫?痛かったね。もう大丈夫よ」となだめながら、ぶつかったところを確認した。
おでこが赤くなっただけで大丈夫そうだった。
ふっと安心してコタを見ると、
コタは固まっていた。
私と目が合うと、
コタの顔はみるみる歪んで真っ赤になり、
「ふあーーーん!」と泣き出した。
コタは分かったのだ。
自分が何か失敗してしまったことを。
でも、私は見ていたから分かった。
コタは妹におもちゃを渡そうとしていただけ。
渡し方を間違えただけだ。
私は大泣きする下の子を抱っこしながら、急いでコタを抱きしめた。
「コタちゃん、妹ちゃんにおもちゃ渡したかっただけなんだよね?
教えてあげてたもんね。
お母ちゃんがちゃんと見ていなかったから。
お母ちゃんが悪いの。
ごめんね。
コタちゃんは何も悪くないよ。
大丈夫だよ」と言った。
「ふえーーーん!」と泣き続けるコタ。
私は「大丈夫」「コタは悪くない」を繰り返し、ひたすらコタをなだめ続けた。
下の子はもう泣き止んでいた。
数分後、コタは徐々に落ち着きを取り戻してきた。
私が「びっくりしちゃったね」と言うと、
コタはしゃくりあげながら「びっ…くい…した…」と小さな声で答えた。
もし私が成り行きを見ていなかったら、「おもちゃを妹に落とした」という事実だけでコタを叱っていたかもしれない。
子どもは時々予想のつかない行動をする。
親の一瞬の気の緩みが、身体の傷にも心の傷にもつながる。
気を付けよう、と身の引き締まる出来事だった。
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シリーズ~昔の日記を読む~ 第3話:おもちゃの渡し方・終