公園での出来事・前編

2021-01-31

ここ数ヵ月で、コタはだいぶ積極的になった。

 

スーパーのレジで店員さんに「おねがいしまーす」と言ったり、

宅配便のお兄さんに「こんちはー」と挨拶したり、

公園で初めて会う子にも自分から話しかけるようになった。

 

 

人と接することが楽しくなってきたのかな、と私は嬉しく思っていた。

 

 

 

 

これは、先週、電車の見える公園に行ったときの出来事である。

 

 

 

 

お散歩や公園に行く時、「何か」を持っているのが好きなコタ。

その日はおやつの入ったタッパーを持っていた。

 

「何か」はコタのその日の気分で変わり、

プラレールの貨物列車の日もあれば、

スナック菓子の袋の日もある。

 

 

今日のタッパーには、アンパンマンミニミニチョコの開いた袋が入っていた。

公園でのおやつの時間にそれを2粒食べることを、コタはとても楽しみにしていた。

コタは、その大事な大事なタッパーを片時も離さずに、ジャングルジムや滑り台で遊んでいた。

 

 

 

ふと、ヨチヨチと、小さな女の子がコタに近づいてきた。

1歳半くらいだろうか。

 

 

その女の子が、コタの持っているタッパーを触りだした。

 

 

コタは真顔で固まった。

 

 

すぐにその女の子のお父さんが来て、

「〇〇ちゃん!だめだよ!人のものを取っちゃいけない!」と注意をした。

しかし、女の子はぺたぺたとコタのタッパーを触ったり、引っ張ったりし続けた。

 

 

コタは固まったままタッパーを触られ続け、振り払うこともせず、叫ぶこともしなかった。

 

 

じっと我慢しているようだった。

 

 

相手が小さい子だから、黙って我慢してあげているのかな、エライな、と私は思った。

 

 

コタが上手に我慢出来ているので、

私は女の子に「おやつ、気になっちゃうよねー」などと話しかけていた。

 

 

お父さんは、女の子への何回かの口頭注意のあと、コタに「ごめんね」と言って、女の子を抱っこで強制退場させた。

 

 

 

女の子が去っても、

コタは真顔で微動だにせず立ち尽くしていた。

 

 

 

私は、「コタ。よく我慢できたね。じゃあ、そろそろ3時だし、おやつ食べようか」と声をかけた。

 

 

 

すると、コタは突然、「わあーっ」と泣き出した。

 

 

 

私は「どうしたの?」と聞いたが、コタはただ「わあーっ」と叫びながら大粒の涙をぼろぼろこぼし続けた。

パニックの時の泣き方だった。

 

 

 

私は、コタの背中をなでながら、

「ちょっとびっくりした?」

「よく我慢したね」

「コタの大事なおやつだもんね」

「あの女の子、コタが良いもの持っていたから、気になっちゃったんだって」

「コタ、頑張って我慢したから、特別にチョコ3つ食べていいよ」

などと声をかけ続けた。

 

 

 

5分ほど、コタは大声で泣き叫んでいた。

 

 

 

じっと我慢できているから大丈夫だと思ったが、

突然のことにびっくりして、固まるしかなかったのか。

 

 

 

やがて落ち着いたコタは、

小さな声で「さん、たべる?」と指で3つを作り、

涙と鼻水に濡れた顔のままタッパーを開けた。

 

そしてアンパンマンミニミニチョコを3つ選んで食べた。

 

 

 

 

 

 

コタは、

自分発信の、自分のタイミングでのコミュニケーションは取れるようになってきたけれど、

 

予期せぬ形でのコミュニケーションは、まだまだ苦手なんだろうな。

 

相手が自分より小さな子でも。

 

 

 

 

 

 

 

まだ3歳で幼いから、

こういうことがあって当たり前なのだろうけど、

 

常に障害のことが頭にあるから、

どうしたって考えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

これは「性格」の範囲なのか、「特性」なのか。

 

 

 

≪つづく≫