10月下旬、保育園で年少さんの運動会があった。
例年は1歳クラスから年長さんまで全員で行われている運動会だが、今年はコロナ対策で保護者の密を避けるために各学年ごとに行われた。
年少さんの種目は、
1、ダンス
2、かけっこ
3、宝物探しゲーム
4、親子おんぶリレー
である。
園では、1ヵ月前から運動会の出し物を遊びとして取り入れていた。
だから園児たちはダンスもかけっこも慣れている。
しかしコタは、みんなと一緒に何かをやることをずっと拒否していたそうだ。
ダンスもかけっこも、みんながやっているのを遠くで眺めるか応援するかのどちらかだったそう。
しかし運動会の数日前、みんながかけっこを終えた後、コタは突然「コタもはしる!」と言ってゴールに向かって走りだした。
加配の先生は慌ててゴールにいた担任の先生に合図をしてゴールテープを広げてもらい、コタは初めてゴールテープを切った。
みんなが走り終わった後で、しかも1人でだったが、初めてかけっこコースを走れたのだ!
それが嬉しかったのか自信が付いたのか。
運動会の前日、ついにコタはみんなとかけっこコースを走った!
よーいドン!の掛け声と共に、初めてクラスのお友達と並んでかけっこコースを走ることが出来たのだ!!
その時加配の先生がたくさん褒めてくれたようで、「あしたもかけっこする!」とコタはやる気満々だった。
そしてそのやる気を従えたまま、ついに迎えた運動会当日。
コタのやる気は頼もしいが、夫と私は「今日は保護者がたくさん来るからいつもと雰囲気が違うし、もしかしたら(かけっこは)難しいかもね。でもみんなで楽しめればいいよね」と話していた。
また、園の一番の目標は『楽しむ』ことで、私は加配の先生から「コタ君は出来そうだったら参加するという形で大丈夫です。とにかく親子で体をいっぱい動かして楽しんでください」と言われていた。
だから私の気持ちは軽かった。
出来なくてもいい。楽しもう。
9:00になり、いよいよ運動会が始まった。
保護者の待つ体育館に年少さんたちがぞろぞろ入場してくる。
さっそく夫を見つけるコタ。
夫がいることにテンションが上がったコタは、夫から離れない。
先生が声をかけようが園児たちが集まろうが、夫にぺったりぴったりひっついている。
あー、きっと今日はずっとこんな感じなんだろうなー…と私は直感した。
ダンスが始まった。
相変わらずコタは夫から離れない。
…しかしなんというか、やはり他の園児さんたちはすごいなあ。
こんなすんなりみんなと同じことが出来るんだなあ。
お父さんお母さんと離れて。
それも楽しそうに。自らの意思で。
ひとり体育館の隅で寝転ぶコタ。
ふと、療育の記憶がよみがえる。
活動を拒否して泣き叫ぶコタを抱え、遊戯室の隅で疎外感と孤独を味わい続けた療育。
(考えるな、考えるな。出来なくていい。今日は楽しむんだ)
私は自分に言い聞かせた。
さあ、次はかけっこ。
加配の先生がコタを呼びに来てくれて、うまくみんなのところに連れ出してくれた。
コタと先生が手をつないでスタート位置に並ぶ。
コタを含めた4人で走るようだ。
位置について、よーいどん!
コタ選手、スタートは遅れましたが力強く走りだしました。
加配の先生も隣を走ってくれています。
良い走りです。
加配の先生はコタひとりで大丈夫だと思ったのか、走るのを止めました。
コタ選手、ひとりで走っています!
みんなとかけっこしています!
みんなとかけっこが出来ています!!
レースは終盤。そのまま3位をキープしているコタ選手。
そしてゴール!!!3位でゴォーーール!!!
しかし、ゴールの決定的瞬間はカメラマンぶたこが興奮して叫んでいたので撮れなかった模様…!
なにやってるんだーっ!母ぶたこーっ!!!
しかし、写真なんぞ残っていなくても、コタ選手の雄姿はしっかり父母の胸に刻まれたことでしょう!!
ゴールをしてぼーっとしているコタ。
そこに加配の先生が駆け寄って来て、
コタをぎゅーっと抱きしめてくれた💛
そこに進行をしていた担任の先生も来て、コタをなでなでして褒めてくれた💛
照れてくねくねしているコタ(#^.^#)
コタは先生たちの熱い抱擁が終わると、スタートライン付近にいた夫の元へ走って行った。
「ぼく、かけっこできたよ!」と報告しているのかな?
さあ、次は宝物探しゲームだ。
体育館に隠された宝物を加配の先生と探すコタ。
加配の先生は、宝物を見つけたコタをうまくみんなの元に誘導してくれている。
先生のおかげで、コタはちゃんと年少さんの一員として運動会に参加できていた。
コタがみんなの輪の中に入っているー( *´艸`)
その後の親子リレーでは、コタは機嫌がいいのかずっとくるくるしていたり、
たまに端っこで寝転んでいたり、
親子リレー自体も、コタがふざけていたのでグダグダでびりっケツだったけれど、
コタは終始楽しそうだった。
こうして1時間半の運動会は終わった。
帰りに加配の先生と話したら、「コタ君、ちゃんと走れましたね!私、もうドキドキして涙出そうになりました」と、先生は私たち親より興奮気味だった。
コタがみんなと走れたことを本当に喜んでくれた。
本当に先生たちのおかげだなあ。
これしか言葉が浮かばない。
コタが保育園に通えているのは本当に先生たちのおかげ。
半年前には想像もつかなかった。
コタが私たち親の元を離れて、みんなと一緒にかけっこをするなんて。
みんなと何かをするなんて。
考えられなかった。
それと同時に、コタは集団の中で目立つなあ…ということを再認識させられた。
体育館の階段が気になってみんなが並んでいるのに階段に行ったり、くるくるくるくるしたり。
やっぱそうなんだなあ、難しいんだなあ、と。
ただここにマイナスな感情は無い。
「そうなんだなあ」と現実を再確認しただけだ。
これは、私の気持ちも成長したということかしら?
もしかしたら、1人で見に来ていたらしんどかったのかもしれないが、「ええやん別に」でお馴染みの夫も一緒だったから良かったのかもしれない。
夫も私も、運動会を楽しめた。
では最後に一句。
コタが
みんなと一緒にかけっこ出来たから
10月26日は
かけっこ記念日
(ぶたこ、パクリの短歌)