コタにはずっと憧れていたお菓子があった。
それは、「アンパンマン ペロペロチョコ」である。
今までスーパーで自分でおやつを選ぶ時、コタはいつも真っ先にこのアンパンマンペロペロチョコを手に取っていた。
でも1回で食べきるには多い量だし、半分残しておくのも難しそうなので、私は「このチョコは大きいから、コタがもうちょっとお兄ちゃんになったら食べようね」と言い続けていた。
コタはその度に、「わかった…」と名残惜しそうにそれを陳列棚に戻していた。
先日、
コタが4歳になった。
なので、アンパンマンペロペロチョコを解禁することにした。
でも、日常的にあげられるお菓子ではない。
何か特別なことがあったり、コタが頑張った時にあげるのが良いだろう。
サプライズで出せば、コタはきっと大喜びするはず。
私はご褒美用として、とりあえず1個買っておくことにした。
コタにはもちろん内緒だ。
私はそれを冷蔵庫の扉の一番上の棚に隠した。
高い位置に置いたし、そもそもコタは自分で冷蔵庫を開けられない。
それに、もし私が冷蔵庫を開けるときにブツが見えたとしても、パッケージは裏側を向いている。
バレることはないだろう。
ところが翌日。
私がご飯の支度をするために冷蔵庫を開けた時、
コタが冷蔵庫を見上げ、「あんぱんまんぺおぺおちょこ、あるね」と嬉しそうに言った。
私が「え?」と言うと、
コタは扉の棚を指さした。
バレたー…。
バレてしまったー…。
と言うか、よくこれがペロペロチョコだと分かったな。
裏側を向いているのに。
ではもう一度冷蔵庫をご覧ください。(ちなみにアングルはコタ目線です)
↓
…いやいやいやー。
なんで分かるんだ。
すごいなコタ。
スーパーで手に取った時、裏側も見て記憶していたということだろうか。
ちなみに裏側の拡大図はこれである。
↓
アンパンマン要素はほとんど無いのに。
恋焦がれすぎて、裏側のデザインもしっかり記憶していたのか。
だとしたら、すんごい記憶力だな。
ちなみに私が驚きすぎてコタの話に生返事をしていたら、いつの間にか10時のおやつにペロペロチョコをあげることが決まっていた。
まあ、バレてしまったものは仕方が無いので、
こうなった以上私の望みはコタにペロペロチョコを全力で楽しんでもらうことである。
その後、楽しみすぎて、9時位から1分刻みで「そろそろおやつですかー?」と聞きに来るコタ。
その姿が可愛くて本当は今すぐにでもパッケージを引きちぎってあげたいが、おやつは10時と決まっている。
例外を作るわけにはいかない。
「おやつですかー?」を聞くたびに返ってくる私の「まだだよー」に、残念そうに、時折怒りながらコタは居間に戻っていく。
9:50には、待ちくたびれ過ぎて半泣きになっていた。
今までも十分頑張っているし、あと10分頑張る為の活力として、「まだ10時じゃないから食べられないけど、持つ?」と聞くと、コタは嬉しそうに「もつ!もつ!」と叫んだ。
私は冷蔵庫からペロペロチョコを出し、コタに渡した。
コタは小さな声で「わー💛」と言いながら受け取った。
ついに憧れのペロペロチョコを手中に収めたコタ。
それから10分間、コタは愛おしそうにペロペロチョコを眺め続けていた。
クライマックスは刻々と近づいている。
そしてついに10時!
よく待てたね、コタ!
大切そうに、ぴりり、ぴりり、とチョコを開けるコタ。
幸せそうに眺める。
その後、嬉しすぎてなかなか食べず、
ピカチュウにお裾分けをし、
ようやく口に入れたと思ったら、たっぷり1時間かけてペロペロ舐め切ったのでした。