コタが下の子の持っているおもちゃを奪った。
それを注意すると、コタは逆ギレ。
「おかあちゃん、コタが、とまってるよ、っていってるの、きかないじゃん!」
なんのこっちゃと思ったが、よくよく話を聞いたら心当たりがあった。
コタが下の子のおもちゃを奪う前。
コタは紐の付いた車を引っ張りながらテーブルの周りを走り回っていた。
下の子もテーブル付近をウロウロしていた。
以前同じような状況があり、
私は「妹ちゃんが近くに来たら、止まってね。危ないからね」とコタに注意をしていた。
コタは約束を守って下の子とすれ違う時にちゃんと立ち止まり、「みて、コタ、とまってるよ」と報告してくれた。
私はその度に、「ありがとう」「優しいねコタ」「妹ちゃんも喜んでいるよ」と返事をしていた。
しかし先ほどは、「みて、コタ、とまってるよ」のアピールに対して、私は生返事しかしていなかった。
いや、生返事すらしていなかったかもしれない。
コタの理屈としては、
『僕も妹ちゃんのおもちゃを奪ったけれど、それ以前にお母ちゃんだって僕を無視していた。それは悪くはないのか?』
と言うことだろう。
私はウッと言葉に詰まり、コタは私を責め始めた。
コタ「だっておかあちゃん、きかないじゃん、コタ、とまって、いってきまーすって、いったのに!」
そりゃ悪かったけれど、まず下の子のおもちゃを奪ったことは叱らなければならない。
時間が経つと何で叱られているのか分からなくなってしまう。
私「コタ、妹ちゃんのおもちゃ、取っちゃだめだよ」
コタ「コタが、とまってるよ、っていってるの、おかあちゃん、きかない!」
私「コタ。妹ちゃんにかーしーて、って言うんだよ」
コタ「コタ、とまって、いってきまーすって、いったのに!」
このターンが5回続いた。
私は6ターン目で止めたが、コタは延々と私を責め続ける。
コタ「だって、おかあちゃんが、きかないじゃん、コタ、とまってるよ、っていったのに!」
私「…」
コタ「そんなのないよ!だって、おかあちゃんが、コタ、とまって、いってきまーすって、いったよ!」
私「…」
コタは車を引っ張りながら、テーブルの周りをたたたっと回り始めた。
そしてピタッと止まり、
コタ「おかあちゃんが、きかないじゃん!コタ、とまったよって、いった!」
コタ、テーブルの周りをたたたっと回り出す。
ピタッと止まり、
コタ「コタ、とまって、いってきまーすって、いったよ!」
私が「…まだ言ってる」と呟くと、成り行きを見ていた夫が噴き出した。
コタはほっぺを真っ赤にして口を尖がらせて私を見ている。
私はなんだか可笑しくなって、
「分かった分かった。お母ちゃん悪かったよ。
ちゃんと止まってくれたのに、何も言わなかったね。
ごめんね。
お母ちゃんが悪かった。
もうしないから。
だから、もう、この話はおしまいにしよう?」
コタは、パアッと笑顔になり、
「わかった。おかあちゃんがおしまいにして」
と言った。
私は元気良く、「はい。じゃあ、これでおしまい!」と言った。
コタは納得したようで、それ以上私を責めなかった。
いやはや。
しつこい、というか、
信念がある、というか、
逃がさない、というか。
なんというか、
君の執念に負けた。
無視してごめんね。