その日の夜、
コタは帰宅した夫に、「おともだちに、おやつ、とられたの」と報告していた。
私はそれを聞いて、
昼間の自分の対応を思い返した。
私が見る限り、女の子はタッパーを触るだけで、取ろうとしているようには見えなかった。
それに、実際に女の子が取ろうとしたとしても、コタより小さくて力は弱いから、取られることはないと思っていた。
だから笑って見ていた。
でも、
コタは「おやつを取られた(取られそうになった)」と思った。
私は常に頭の中に『自閉症スペクトラム』のことがあり、物事を複雑に見てしまうきらいがある。
どうしたって『特性』について考えてしまう。
でも、フラットに見たほうがいい時もある。
今回の出来事の根本は単純なことだ。
コタは、おやつを取られそうになって、嫌だった。
根本はそれ。
コミュニケーション云々、特性云々はその次のこと。
もっとその根本を分かってあげれば良かったな。
コタが固まっている時、「取られないよ、大丈夫だよ」と、コタに一言言ってあげれば良かった。
そうしたら、コタは安心したかもしれない。
相手の女の子に対しても、「これ、コタの大事大事なんだ」とコタの気持ちを代弁したら、
コタはもっと安心して、あんなにパニックになることは無かったんじゃないかな。
気付いてあげられなくてごめんね、コタ。
ひとつ、確実に分かったことがある。
じっと我慢しているのがエライと思ったけれど、
あれは積極的な我慢ではなかった、と言うこと。
コタは、うまく「やめて」や「いやだ」が言えないから。
だから、固まるしかなかった。
その固まったコタを見て、私が「我慢している」と勝手に良いように解釈しただけ。
これからは、このことを気を付けて見ていこう。
また、やり方も教えていきたい。
今回の場合だったら、「嫌な時は、優しく『やめて』って言うんだよ」と。
「言っていいんだよ」と。
言い方や、気持ちの出し方を、ひとつづつ教えていこう。
≪おわり≫