逃がさない

2021-02-26

コタが下の子の持っているおもちゃを奪った。

 

それを注意すると、コタは逆ギレ。

「おかあちゃん、コタが、とまってるよ、っていってるの、きかないじゃん!」

 

 

 

 

なんのこっちゃと思ったが、よくよく話を聞いたら心当たりがあった。

 

 

 

 

コタが下の子のおもちゃを奪う前。

 

コタは紐の付いた車を引っ張りながらテーブルの周りを走り回っていた。

下の子もテーブル付近をウロウロしていた。

 

 

以前同じような状況があり、

私は「妹ちゃんが近くに来たら、止まってね。危ないからね」とコタに注意をしていた。

コタは約束を守って下の子とすれ違う時にちゃんと立ち止まり、「みて、コタ、とまってるよ」と報告してくれた。

私はその度に、「ありがとう」「優しいねコタ」「妹ちゃんも喜んでいるよ」と返事をしていた。

 

 

しかし先ほどは、「みて、コタ、とまってるよ」のアピールに対して、私は生返事しかしていなかった。

いや、生返事すらしていなかったかもしれない。

 

 

 

コタの理屈としては、

『僕も妹ちゃんのおもちゃを奪ったけれど、それ以前にお母ちゃんだって僕を無視していた。それは悪くはないのか?』

と言うことだろう。

 

 

 

私はウッと言葉に詰まり、コタは私を責め始めた。

 

 

コタ「だっておかあちゃん、きかないじゃん、コタ、とまって、いってきまーすって、いったのに!」

 

 

そりゃ悪かったけれど、まず下の子のおもちゃを奪ったことは叱らなければならない。

時間が経つと何で叱られているのか分からなくなってしまう。

 

 

私「コタ、妹ちゃんのおもちゃ、取っちゃだめだよ」

 

コタ「コタが、とまってるよ、っていってるの、おかあちゃん、きかない!」

 

私「コタ。妹ちゃんにかーしーて、って言うんだよ」

 

コタ「コタ、とまって、いってきまーすって、いったのに!」

 

 

 

このターンが5回続いた。

 

私は6ターン目で止めたが、コタは延々と私を責め続ける。

 

 

 

コタ「だって、おかあちゃんが、きかないじゃん、コタ、とまってるよ、っていったのに!」

 

私「…」

 

コタ「そんなのないよ!だって、おかあちゃんが、コタ、とまって、いってきまーすって、いったよ!」

 

私「…」

 

 

コタは車を引っ張りながら、テーブルの周りをたたたっと回り始めた。

 

そしてピタッと止まり、

 

 

コタ「おかあちゃんが、きかないじゃん!コタ、とまったよって、いった!」

 

 

コタ、テーブルの周りをたたたっと回り出す。

 

ピタッと止まり、

 

 

コタ「コタ、とまって、いってきまーすって、いったよ!」

 

 

 

私が「…まだ言ってる」と呟くと、成り行きを見ていた夫が噴き出した。

 

 

 

コタはほっぺを真っ赤にして口を尖がらせて私を見ている。

 

 

 

私はなんだか可笑しくなって、

 

「分かった分かった。お母ちゃん悪かったよ。

ちゃんと止まってくれたのに、何も言わなかったね。

ごめんね。

お母ちゃんが悪かった。

もうしないから。

だから、もう、この話はおしまいにしよう?」

 

 

 

 

コタは、パアッと笑顔になり、

「わかった。おかあちゃんがおしまいにして」

と言った。

 

 

 

私は元気良く、「はい。じゃあ、これでおしまい!」と言った。

 

 

 

コタは納得したようで、それ以上私を責めなかった。

 

 

 

 

 

 

 

いやはや。

 

 

 

しつこい、というか、

 

信念がある、というか、

 

逃がさない、というか。

 

 

 

なんというか、

 

君の執念に負けた。

 

 

 

 

 

 

無視してごめんね。