2021年 4月5日。
ついに保育園の入園式の日が来た。
下の子も保育園に入るため、コタと下の子と夫と私の家族全員で行った。
コタが園内に入るのに時間がかかるかもしれないと思ったので、かなり早めの出陣となった。
1番乗りで保育園に到着。
人が居なかったためか、コタはすんなりと入れた。
第一関門突破。
加配の先生が「好きなおもちゃで遊んでていいよ」と言ってくれたので、コタは早速段ボール消防車で遊び始めた。
そうこうしているうちに、ちらほらと他のご家族の姿が見え始めた。
だんだんと園内がざわつき始めたが、コタは気にする様子も無く遊びに夢中になっていた。
しばらくして、コタは消防車遊びに満足したのか、廊下にあるスーバーのセットに入りお店屋さんごっこを始めた。
店員はコタ。
お客さんは加配の先生と私。
私「お店屋さん、ジュース下さい」
コタ「はーい。かしこまったー。どうぞー」
私「はい、お金です」
コタ「はーい、ありがとうございまったー」
コタ主導で楽しくお店屋さんごっこを続けていると、そこに女の子がやって来た。
コタと同じ新入園の年少さんだ。
女の子はお店のセットの中に入り、レジにいるコタの隣に行った。
コタは女の子を見て固まった。
そして泣き出した。
どうやら、女の子が来たのが気に食わなかったらしい。
「ひとりでやりたかったの!」と癇癪を起した。
…あー。
式の直前で始まってしまったー。
最悪のタイミングだー。
コタはお店のカゴを持ったまま泣き続けた。
そうこうしているうちに、入園式の時間になった。
私はこの時点で悟っていた。
おそらく参加は無理だろう。
今何かを誘っても全て拒絶するのは火を見るよりも明らかである。
夫も「(参加できなくても)別にええやん」と言っている。
うん、いいや。
無理強いはしない。
なるようになれー♪
先生たちの呼びかけで新入園児が保護者の方と手をつないで廊下に並んだ。
これから式場となる遊戯室に入場するのだ。
みんなきちんと整列をしている。
私は一応、と言うか、わずかな望みを胸に「お母ちゃんと行こう」とコタに声をかけてみた。
しかし、と言うか案の定と言うか、コタは半べそで「いかない」と言った。
「じゃあ、ここからお母ちゃんと見てよっか」と言うと、コタはこくんと頷いた。
なので、我ら家族は廊下から式場内を見学することにした。
お子さんと保護者の方が手をつないで式場に入っていく。
パチパチパチと拍手が聞こえる。
椅子に座る。
廊下にいるのは私たち家族4人だけ。
来賓や保護者の方が数名、ちらちらとこちらを見ている。
「どうしてあの人たち来ないの?」という顔をしている。
先生が私たちを呼びに来てくれたが、私は「多分無理だと思います。しばらくここに居て、入れそうだったら入ります」と言った。
先生は見やすいように遊戯室の扉を少し開けてくれた。
先生方もコタの特性を知っているので、それ以上声をかけてくることは無かった。
園長先生のお話が始まった。
以前、園長先生は「入園式では例年、ほとんどの子が椅子に座っていられず、お母さんの膝に座っているんです」と言っていたが、目の前の式場ではほとんどの子がきちんと椅子に座っていた。
みんなすごいなぁ…。
コタは依然として廊下で遊んでいる。
私は少しでもコタが式場内に興味を持つように、扉のところで拍手をしたり笑ったりとわざと大きなリアクションを取った。
しかし、コタは一向にこちらを見ず、遊びに熱中だった。
一番端の空いたコタの椅子と、私たち夫婦の椅子。
コタの椅子の隣に座っている女の子が、コタの椅子を指さして「ここは誰が座るの?」と母親に聞いていた。
来賓の挨拶が終わると、スクリーンでビデオが流れ始めた。
保育園の紹介VTRと年長さんたちのビデオメッセージだ。
すると、コタはビデオに興味を持ったのか、扉のところにいる私の隣に来た。
私がさりげなく「中で見ようか」と言うと、「うん」とコタは言い、私たちは遊戯室の中に入った。
コタは端っこの子供用の小さな椅子に、私はその後ろの椅子に座った。
コタはそれから最後まで、自分の椅子に座っていられた。
式に参加できたのは、ほんの2分。
それでもいい。
それでいい。
まさか式場に入れるとは思ってもいなかった。
私たち家族にとっては上出来だ。
式の終わりに家族4人で写真を撮った。
コタは良い笑顔で写真に納まった。
笑顔で終われて良かった。
≪保育園に慣れるまで(4/6 保育園2日目)≫に続く。