精神科へ行く・2

2021-08-13

とは言ったものの、実際に動き出すまでにはそこから更に2ヶ月を要した。

 

 

気持ちは「行かなきゃ」と思うものの、どうにも身体が動かない。

 

 

新しい人と会うことがひどく億劫なのだ。

 

 

 

 

 

 

4月の上旬、役場で社会福祉士さんとKさんとの2回目の面談があった。

 

 

 

 

書類関係の難しい話をした後は雑談タイムだ。

 

 

この時期はコタの登園しぶりがあったので、その話が中心だった。

 

 

コタは敏感に察するし『なあなあ』が通用しにくい子なので、毎日保育園に行かせるのに苦慮していた。

 

 

 

 

Kさん「ごまかしがきかないでしょ。これも特性なの」

 

 

私「そうなんですか…(そんな特性もあるんかーい!(パシッ))」

 

 

Kさん「そう。それと、嘘は絶対ダメよ」

 

 

私「ああ…それは何となく分かります。嘘は本当に逆効果だなって。…でも、ごまかしがきかないのは困るんですけど、逆に感心しちゃうんですよね。ちゃんと分かっているんだなって」

 

 

Kさん「そう、本当は良いことなのよね。コタ君が自分が納得するまでやるってことは。ぶたこさん、そこが『良いこと』と思えるのは、すごく大事よ」

 

 

 

 

Kさんはいつも私のことを褒めてくれる。

 

 

 

 

 

 

そして、発達障がいのある自身の娘さんのことをすごく大切にしているのが言葉の端々から伝わる。

 

 

 

 

 

 

だから、Kさん母子が近所の人から「あの家の子は仕事に行っていない」と陰口を言われているという話を聞いて悲しい気持ちになった。

 

 

 

 

でもKさんはこう続けた。

 

 

 

 

「私は全くそんなの気にしないの。

 

今は小さなことでも幸せを感じるようになった。

 

娘が状態が良い時にお弁当を持って仕事に行ってくれるだけで幸せを感じる。

 

娘がそれをくれた。

 

健常の子を持つ親は感じない小さな幸せがたくさんある。

 

娘がいたから、私は周りの人も幸せになるように助けたいと思うようになった。

 

周りの人が幸せだったら、周りの人は娘を助けてくれるから」

 

 

 

 

 

 

結局この日は精神科受診について切り出す勇気が出なかったけれど、

 

 

心が温かくなった面談だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約1ヵ月後の5月中旬、

 

 

コタの登園しぶりも無くなり、私も時間の余裕が持てるようになった頃、

 

 

就職活動の合間に1度で良いからカウンセリングに行ってみようとついに決意をした。

 

 

 

 

この1ヵ月の間、気持ちが暗くなった時、時々Kさんの言葉が私の心の中でひょこひょこ顔を出してくれた。

 

 

 

 

そのおかげか、私は「変わりたい」と言う思いを持ち続けられていた。

 

 

 

 

 

 

私は社会福祉士さんに会いに役場を訪ねた。

 

 

以前お勧めの精神科の病院を教えてくれたのだが、聞き流して忘れてしまったので、再度病院名を教えて頂くためである。

 

 

 

 

私が窓口で社会福祉士さんに「以前に保健師さんたちに言われていたように、カウンセリングを受けてみようかと思うんですが…」と言うと、

 

 

社会福祉士さんは「あ、そうですか…」とホッと笑顔になって、「…あ!!それなら、今ちょうど…」と急に慌てだした。

 

 

 

 

そして、

 

 

「実は、たった今なんですけど、明日私と一緒に○○病院の精神科に初診に行く予定だった方が体調不良でキャンセルしたいと連絡がありまして。

 

その病院がKさんもよく知っているとっても良い病院で、女医さんでしっかり話を聞いてくれる信頼のできるところで、役場を通しても何人かご紹介したことがあるんです。

 

けれど、その明日の枠が空いてしまって、人気の病院だからもったいないなと思っていて…、良ければぶたこさん、明日どうですか?

 

あ、今ちょうどKさんが役場に来ているから、Kさんに会ってもらって、Kさんが直接看護師さんに連絡取れるから…」

 

 

と、あれよあれよと話が進み、

 

 

 

 

Kさんが秒の速さで私の初診の予約を取り付け、

 

 

役場の会議室で私に事前カウンセリング(私の家族構成や略歴、相談したいことを話す)をして下さり、

 

 

翌日社会福祉士さんも一緒に精神科に行くことが決まった。

 

 

 

 

 

 

本当に「あれよあれよ」だった。

 

 

これ以上の「あれよあれよ」は今後の人生にもなかなかないだろう。

 

 

今国語のテストで『「あれよあれよ」を使って文章を書け』という問いが出たら、私は迷わず「あれよあれよと精神科受診の日取りが決まった」と書く。

 

 

それ程のまごうことなき「あれよあれよ」だった。

 

 

 

 

 

 

それはさておき、今日動いて明日さっそく受診できるとはなんてラッキーなんだろう。

 

 

それに社会福祉士さんが一緒に来てくれるのはとても心強い。

 

 

 

 

 

 

Kさんは、「とっても良い病院だけど、相性があるから、ぶたこさんが話しにくいなと思ったら無理に通わなくていいのよ」と言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

車に戻り、夫にメールで「急だけど明日精神科に行くことになった」と報告をすると、すぐに「おお!」と返信が来た。

 

 

淡白な夫のビックリマーク付きの返信は、だいぶテンションが高い方である。

 

 

夫もさりげなく私にカウンセリングを勧めていた(でも何度も言うと私の性格上怒りだすのが分かっているから本当にさりげなく)ので、夫も多少ホッとしただろう。

 

 

それだけでも受診に向けて動き出したことに意味はあると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

≪つづく≫

 

 

 

 

 

 

【あれよあれよの図】