コタは8月生まれ。
8月の初旬、保育園で8月生まれの園児のお誕生日会を開いてくれた。
8月生まれの子の保護者も参加して良いとのことで、私は会の始まる5分前にいそいそと遊戯室へ向かった。
遊戯室では未満児さんから年長さんまでのたくさんの子どもたちが遊んでおり大賑わいだった。
走り回ったり、工作したり、絵本を読んだり、先生とじゃんけんしたり…。
そんな中、正面の舞台に3人の子どもが椅子に並んで座っていた。
椅子は舞台の真ん中にあり、1メートルほどの間隔をあけて、こちらを向いている。
椅子の後ろには「おたんじょうび おめでとう」のアーチがかかっている。
3人の胸には、バースデーケーキの絵に「おたんじょうびおめでとう」と書かれた手作りバッジが光っている。
皆真顔で、きちんと椅子に座っている。
そして舞台の上から、元気に遊ぶ他の子どもたちをじいいっと見下ろしている。
なんとも不思議な光景である。
その3人の真ん中に座っているのがコタだった。
おそらくこの3人が、今日のお誕生日会の主役なのだろう。
私が廊下から遊戯室を覗いていると、加配の先生が来て「みんな15時から座って待っているんですよ」と教えてくれた。
…30分座って待っているのかー!
お誕生日会が嬉しくて、ずっと座っているのかー!
なんて可愛いんだばかやろう!
私は真顔で『その時』を待つコタを陰から見ながら、膝から崩れ落ちそうになるくらい悶絶した。
15時30分になったので遊戯室に入ると、コタは私に気づき、ぱああっと笑顔になった。
そしてたたたーっとこちらに走って来た。
コタは「おたんじょおいけーき!」と、胸のバースデーケーキの書かれた紙の手作りバッジを私に見せてくれた。
私が「いいねー。かっこいいねーコタ」と言うと、コタは嬉しそうににひひっと笑った。
いよいよお誕生日会が始まった。
コタは舞台に戻り、真ん中の椅子に座った。
司会の先生が話している間、コタはこちらをちらちら見ながらにいっと笑ったり「やったー!」と叫んだり飛び跳ねたりと、喜びを全身で表していた。
まず、先生が主役の3人にキラキラの王冠をかぶらせた。
コタは終始にっこにこである。
そして質問コーナーが始まった。
先生がマイクで一人づつ質問をする。
一番最初の女の子が終わり、コタの番になった。
―コタは答えられるかな。
―ちょっとどきどきするな…。
先生「お名前はなんですか?」
コタ「○○(苗字)コタくんです!」
自分の名前に「くん」を付けたコタ。
私はまたピクピク悶絶した。
先生「何歳になりましたか?」
コタ「よんさい!」
続いて、舞台下の園児たちからの質問コーナーが始まった。
園児1「好きな食べ物は何ですか?」
コタ「ぶどう!」
園児2「好きなフルーツは何ですか?」
コタ「スイカ!」
園児3「好きなごはんは何ですか?」
コタ「(長いこと考えて)メロン!」
園児さんたちの質問内容がほぼ一緒。
可愛いなあ。
この園児さんからの質問タイムは、先生が「お誕生日のお友達に質問したい人ー?」とみんなに聞いて「はーい!」と手を挙げた園児の中から主役の3人が順番に指名していくのだが、
コタは選ぶ時、「…××ちゃんでいいや」と年中さんの女の子を指名していた。
こなれた指名の感じが気になったが、それより何より他の学年の子の名前も知っていることに驚いた。
それから先生にプレゼントをもらい、みんなにお歌を歌ってもらい、写真を撮った。
コタはずっとはちきれんばかりの笑顔。
こうしてお誕生日会は無事に終わった。
私は、とても感動していた―
いつのまにかフルネームを言えるようになっている。
質疑応答もできている。
しっかり椅子に座れている。
時々立ち上がって私のところに来ようとするが、周りを見てすぐ戻る。
お母ちゃんびっくりしたよ。
すごいねコタ。
かっこいい4歳になったね。
最後の一コマ「モテる俺」
※「××ちゃんでいいや」のセリフ以外全てイメージです。