今朝。
早起きしたコタと妹がアンパンマンのアニメを見ていた。
その隣に座っている夫が、険しい顔でテレビ画面を睨んでいる。
夫が変な顔をしているのはいつものことなので、私は気にせず1人で朝の準備をしていた。
すると夫がやおら振り返り、「…バイキンマンは、たった1食のために、この技術力を使っているんやなあ…」と私に言った。
私は(また変なこと言ってる)と思いながら笑顔で「うん?」と夫に聞き返すと、
夫はテレビ画面に目を戻し、「…能力ありすぎや。…この技術は凄い」と呟いた。
どうやらバイキンマンの乗っているロボットやUFOのことを言っているようだ。
「この技術力があれば何でも手に入るのに…。何もぶたまんまんの豚マン一つに固執しなくても…」
察するに、夫はバイキンマンの技術力を高く評価しているが故にその技術を持ちながらも彼が最大限にそれを活かせていないことにもどかしさを感じているようだった。
「すごいでこのロボットは。ほら見てみい、この動き。これはなかなか出来ひんよ」
私はどう返事して良いのか分からなかったので、
「こんな技術力があって、もしバイキンマンが超悪い奴だったらアンパンマンの世界は滅びちゃうね。バイキンマンが単なる食いしん坊で良かったよ」と言ってみた。
すると夫はしばらく私の顔を眺め、
「…せやな」と深く息を吐き、
「あいつにはブレーンが必要や…」と呟いてゆっくりどっかへ消えて行った。
ねえ、なにこれ。
ねえなにこの話。ねえねえ。