がんばった!

2020-09-24

本日は、引っ越しの届け出をするためにコタと市役所へ。

 

 

 

私は、市役所では先に面倒な手続きを済ませ、そのあとゆっくりお昼ご飯を食べたいと考えていた。

 

コタがご機嫌麗しく行けるよう、家を出る前におやつを食べさせ、

「これから市役所に行きます。

最初に、お母ちゃんは窓口でお仕事をします。

そのあと、エレベーターに乗ります。

4階に行って、お昼ご飯を食べます」と伝えた。

 

コタは「わかった」と言い、「えぴぴうぇいたー(エレベーター)、のゆ(乗る)?」と嬉しそう。

 

コタは市役所のエレベーターが大好きだ。

 

エレベーターでは「ドアが閉まります」「ドアが開きます」と女性の声のアナウンスが流れるのだが、それがとても好きで、家でもよく真似をしている。

 

さあ、コタはどのくらいエレベーターに乗るのを我慢できるだろうか。

 

『約束』をどこまで守れるだろうか。

 

 

 

 

 

市役所についてから入る前に、私は「先にお仕事をします。それが終わったら、エレベーターに乗ります」と再度コタに伝えた。

 

コタはまた「わかった」と言った。

 

 

 

 

 

受付の女性に転出届がある場所を教えてもらい、記入台へ。

 

それを記入中、早くもコタはそわそわし出した。

 

「おかあちゃん、えぴぴうぇいたーは?」

「おかあちゃん、こっち、いくー?」

「おかあちゃーーん」

「こっちくるのー!」

 

だんだん大きくなるコタの声。

 

私は、

「コタちゃん、先にお母ちゃんお仕事するって言ったよ。それが終わったら、エレベーター乗るから」

「待っててくれてありがとうね」

「お母ちゃんお仕事頑張っているから、応援しててね」

と、なんとかコタをなだめた。

 

コタは「えぴぴうぇいたー…」と半べそになりながらも、窓口に提出が終わるまで待っていてくれた。

 

 

 

 

 

市役所で回る窓口は全部で4つあった。

 

最初に転出届を提出した窓口で案内札をもらい、「お呼びしますのでお待ちください」と言われ、振り向いてコタを見る。

 

コタは、「おかあちゃん、おしごと、おしまい?」と、満開の笑顔だった。

 

(まずい…)と思った。

 

(この感じ、まずいぞ。彼は私のお仕事が終わったと思っているようだ)

 

私は申し訳なさそうに、

「コタちゃん、お仕事まだ終わってないのよ。あと3か所、行くの」。

 

「やーーーーっ!」

 

コタは発狂した。

 

 

 

 

 

「お仕事」に関する私とコタの見解の相違ー

 

私の「お仕事」=4つ全ての窓口を回る。

コタの「おしごと」=いっこのばしょでおかあちゃんがなにかやって、そこをはなれたらおしまい。

 

 

 

 

 

私の言い方が悪かったな。

 

確かに「お仕事」じゃ分からないよね。

 

そもそもなんだいお仕事って。

 

実は、家ではお皿を洗うことや洗濯物をたたむことを「お母ちゃんのお仕事」と言っていて、「お仕事」と言えばコタは割と素直に一人遊びをして待っていてくれる。

 

だから今回も使ったのだけれど。

そううまくはいかないか。

 

もっと詳しく言えば良かったのかなー…。

 

なんてぐるぐる考えていたが、そのうちにコタは泣き出してしまった。

 

「えぴぴうぇぇぇえぇいたあぁぁぁあーーーー」

 

静かな市役所の待合で、コタの叫び声がこだまする。

 

ちくりちくりと視線を感じる。

 

周りの職員さんは笑顔で見てくれているが、待合にいるおじいさんが睨んでいる。

 

うるさいですよね、ごめんなさい。

 

ああ、もう仕方がない。

 

「分かった、コタちゃん。一回だけ、エレベーターに乗って上に行こう。それで4階に行ったら、またエレベーターに乗って、ここに戻ってくるよ。わかった?」

 

コタは鼻水をなめながら(←汚いぞ)、「…わ、かっ…た」と嗚咽交じりに言った。

 

エレベーターのボタンを押したコタに笑顔が戻る。

 

(一回だけで納得するだろうか。4階に行ったら行ったで、ご飯食べたいってデッキのところに行くかもしれない。でも、約束したんだから戻ってこなくては!)

 

4階まで行き、いったんフロアに下りて、またエレベーターに乗り、1階へ降りる。

 

コタはすっかり大人しくなっていた。

 

1階につき、チン!と扉が開く。

 

「コタちゃん、楽しかったね。じゃあお母ちゃん、お仕事の続き、頑張るね」

 

私はそう言うと、窓口へ歩いた。

 

コタは素直について来た。

 

番号が呼ばれ、書類をもらい、次の窓口に行く。

 

私は今の窓口でのやりとりでお仕事が終了だと思われないように、コタに「次は13番窓口だって。1と3の数字を探してごらん。あるかなー?どこかなー?」と、数字が好きなコタの興味を引くように話しかけ続けた。

 

コタは「いち、あったよ、あ、さん、もあるよー」と嬉しそう。

 

そして2つ目の窓口も無事終了。

 

 

 

 

 

さあ。次は3つ目。

 

「コタちゃん、次は16番だって」と言うと、コタの雲行きがだんだん怪しくなっていった。

 

「おかあちゃん、おやつ、たべるー」

 

「困ったなあ。まだお仕事終わってないよ」

 

「たべるー」

 

「もうすぐ終わるよ。頑張ろう」

 

「たーべーるーぅぅぅ」とぽろぽろ泣き出した。

 

 

 

 

 

ああもう、仕方がない。

 

「コタちゃん、一生懸命に待っていてくれているから、1つだけ、おやつ食べていいよ。1袋じゃなくて、1つね。食べたら、最初の約束の通り、お仕事に行こう」

そう言い、すみっこのベンチで野菜チップスの袋を開けた。

 

コタはまた鼻水をなめながら(←母よ、拭いてあげりゃいいのに。でもその時はそんな余裕なかったのよ)、嬉しそうに袋の中に手を突っ込んだ。

 

そして1枚取ると、「えへへへ」と私を見て笑いながら、大事そうに食べた。

 

食べ終わると、「はい」と私に袋を返した。

 

 

 

 

 

これにはびっくりした。

 

本当に1枚で止めるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

「約束守れたね、ありがとう」

 

私は袋を受け取ると、3つ目の窓口へ行った。

 

そこの窓口では、対応してくれた職員さんがおもちゃを貸してくれたので、コタは大人しく遊んでいた。

 

 

 

 

 

いよいよ次は最後の窓口。

 

私は「次のが終わったら、エレベーターに乗れるよ。もうすぐだよ。ああ、楽しみだなあ。早く乗りたいな。コタちゃんお腹すいた?お母ちゃんもすいた。お昼はね、にんじんパンだよ。楽しみだねえ。早く食べたいね」等々を間髪入れず喋り倒し、コタに何か言う隙を与えなかった。

 

こういう時、うきうきと楽しそうに喋るのがコツである。

 

コタもつられて「たのしみだねえ」と笑顔。

 

とても疲れるが、親もテンションを上げていかねばならない。

 

癇癪を起されるより、自分が疲れたほうがまだいい。

 

 

 

 

 

こうして全ての窓口が終わった。

 

「コタ!終わったよ!待っていてくれてありがとう!頑張ったね!えらかったね!さあ、エレベーターに乗るぞー!」とコタをくしゃくしゃに褒め、ハイテンションのまま4階へと向かった。

 

コタも嬉しそうに笑っていた。

 

その後は、4階のデッキでご飯を食べ、おやつもちょっと食べ、図書館のお庭に行って遊んだ。

 

コタは好きなように走ったり、高いところに乗ったり。

 

少しはストレス解消できたかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやはや、

 

疲れた。

 

 

 

 

 

でも、

 

コタは大元の約束は守れなかったけれど、途中の2つの約束はちゃんと守れたね。

 

今日はそれでよし。

 

 

 

 

 

私は2回コタの癇癪に負けてしまったけれど、

 

無条件でコタの要望を聞いたわけではないので、まあ、よしとするか。

 

 

 

 

 

次からは、最初にエレベーターに一回乗せて、心を満たしてから手続きする方がいいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何はともあれ。

 

 

 

 

 

うん。がんばった!